季節性インフルエンザについて

1:インフルエンザについて

 インフルエンザウイルスにより主に冬期に流行する感染症です。高熱に加え、咳や鼻水などの風邪症状、時には下痢・腹痛などの消化器症を伴います。発熱は2~5日間程度続きます。心臓病、呼吸器疾患(ひどい気管支喘息など)、糖尿病、先天代謝異常症、免疫不全、腎臓病といった病気を持っている方や高齢者、妊娠28週以降の妊婦はハイリスク群と呼ばれており、特に注意が必要です。これらのハイリスク群の方ではタミフルなどの抗インフルエンザ薬の投与に若干のメリットがあります。ハイリスク群以外の元来健康な方は薬を使わなくても重症化することは少なく、(とは言っても経過に注意は必要ですが、)水分をしっかりとり、安静にすることで通常は自然に治ります。薬を使わない場合は使った場合と比べて発熱期間は半日から1日程度長くなるとされていますが、熱以外の症状は残ることもあります。治療の有無に関わらず、数日で解熱する方が大半ですが、中には発熱が長引く方もおられます(抗インフルエンザ薬を使っても長引く人ももちろんいます)。

 

2:抗インフルエンザ薬(タミフル)について

 タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスの増殖を抑えるという作用を持っています。あくまでもウイルスをやっつけるのは自分自身の免疫力です。このため抗インフルエンザ薬はウイルスが増える時期である発症後2日以内に使用しなければ効果は期待できません。このためより早期に使用した方が効果がありますが、獲得される免疫がより少なくなるため翌年以降のインフルエンザ罹患が増える危険性がありえます。

 

 これに関して2012年に興味深いデータが出ています。「2008/09年シーズンにA型インフルエンザに罹患した患者の2009/10年シーズンにおける再感染率を、2008/09年シーズンの治療法別に調べたところ、再感染率は無治療であった群の9%に比べ、タミフル単独投与群では37%、リレンザ単独投与群でも45%と有意に高かった。」ということです。抗インフルエンザ薬をしようするとA型で20時間程度(B型は10時間程度)発熱が短くなる効果がありますが、翌年以降にインフルエザに再度感染する可能性が高まるようです。

 

 2009年のパンデミックインフルエンザのときには一定数の高齢者が新型ウイルスに対する抗体を持っているとの報告がありました。昔に似たようなウイルスが流行した時に獲得した免疫だと考えられています。2009年のインフルエンザは例年よりも高齢者の発症が少なかったのですが、過去の免疫がいくらかは有効であったと考えられます。

 

 抗インフルエンザ薬の使用で不十分な免疫しかできなかった場合、年をとってから(つまり、インフルエンザに対してハイリスクとなってから)十分な免疫がないことでインフルエンザ感染を重症化させる可能性があるのです。この懸念が実際に確かめられるのは何十年も後の話です。抗インフルエンザ薬の使用にはそのような未知のリスクも存在することを認識する方が良いと思われます。

 

 さらに抗インフルエンザ薬での治療を行っても合併症である脳症や早期の呼吸障害の発症予防にはならないこと、もともと自然に治る病気であるということ、使用した場合の効果は解熱剤使用回数にすると1−2回程度であることなども考えると、ハイリスク群でなければ抗インフルエンザ薬は必要ないと考えられます。

 

 また異常行動についてはタミフルの内服とは関係なく起こることは知られており、抗インフルエンザ薬を内服する・しないに関係なく、発熱が落ち着くまでは注意して看護していただくことが必要です。またインフルエンザでは気管支炎などが後から起こることもあり、咳がひどくなるときや発熱が長引くとき、ぐったり感が強くなるときなどには再診が必要となります。

  

3:タミフル以外の抗インフルエンザ薬について

 インフルエンザに効果のある薬にはタミフルのほかにもリレンザという吸入治療薬があります。5歳以上でお薬を吸い込むことのできるお子さんで使用可能です。効果や副作用、異常行動などについてはタミフルと特に変わるものではありませんので使用すべき方は基本的にはタミフルのときと同じです。また麻黄湯という漢方薬も効果があることがわかってきました。麻黄湯は昔からある漢方ですが、小児のインフルエンザの治療に使われるようになったのは最近であるため情報が少なく、副作用や実際の効果など十分わかっているとは言えません。ラピアクタという点滴の抗インフルエンザ薬は内服や吸入ができない重症患者さん様の薬剤ですので外来診療においては一般的に必要ありません。またイナビルについては効果に疑問があるため、現時点(2015年1月)ではお勧めしません。やはり、ハイリスク群でなければこれらの薬は使用する必要はないと考えられます。

 

注意:タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬の治療を途中で止めると耐性ウイルスが出現しやすくなりますし、増殖が抑制されていたウイルスが再び増えて症状がぶり返す可能性もありますので、一旦始めれば副作用の心配がない限りは最後まで続けてください。

 

4:抗インフルエンザ薬以外の治療

 基本的には対症療法となります。発熱については別に記載していますのでそちらを参照下さい。インフルエンザの場合の解熱剤はアセトアミノフェンとイブプロフェンを使用します。それ以外の解熱剤はインフルエンザ脳症の重症化に関連すると報告されているので使用してはいけません。またインフルエンザは感染しやすいので「うつさない」「もらわない」ための感染予防も重要です。

 

5:登校登園までの期間

 以前は解熱後2日間経つまでは登校・登園とも学校保健法により禁止されていましたが、2012 年4月から「小学生以上は登校が可能になるのは発症後5日経ち、かつ解熱後丸2日間以上経過していること、園児が登園可能になるのは発症後5日経ち、かつ解熱後丸3日間以上経過していること」に法的にも変更されました。ただ抗インフルエンザ薬の影響が十分考慮されているとは言いがたい基準でいくつかの問題点もはらんでいるのですが、現時点の一応の目安と解釈してください。

 実際のところは抗インフルエンザ薬を使用した場合は解熱後も3日程度はウイルスが残り、完全に治りきっておらず、人にもうつしやすいことが知られています。そのため通常の経過であれば、完全に治りきるまでの期間は抗インフルエンザ薬の使用の有無ではそれほど変わりないように思われます。本人の体調を整えるということと、感染予防の点から、法的な強制力はありませんが、抗インフルエンザ薬を使用した場合には解熱後も2日ではなく3日は家でゆっくりされることをお勧めします。


6:インフルエンザ脳症について

 インフルエンザ脳症はけいれんや意識障害といった神経症状で発症します。発熱2日目までに発症することが大半で、発症頻度は1万分の1程度と高くはありません。まぎらわしいものに高熱によってけいれんを起こす熱性けいれんがありますが、脳症の場合は意識障害が長引き、悪化していくのが特徴です。また脳症とは関係なく子供では高熱のため見えないものが見えたり、聞こえたり、うわごとを言ったりすることがあります。悪化傾向がなく短時間で治まれば熱せん妄という子供でよくある状態ですが、症状が長引く場合や悪化する場合は脳症の可能性もあり受診が必要です。また、けいれんが10分以上続いたり、けいれんの形に左右差があったり、けいれんの後に麻痺があったり、1日に2度以上けいれんを起こしたり、けいれん後の意識回復が長引く場合は速やかな受診が必要となります。

 

7:その他

 インフルエンザに関しては本質的なこと以外にも多くの問題点が存在しています。迅速検査もその一つです。陰性に出てもほとんど間違いの状況や陽性に出てもほとんど間違いの状況が存在します。検査結果の解釈はそのときの状況によって大きく変化するため、検査をすればはっきりするわけではありません。

 →インフルエンザ迅速検査の問題点


その他の問題点については

 →インフルエンザ診療は問題点だらけ



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