低身長は成長ホルモンを打つと伸びると聞きましたが?

 時と場合によります。成長ホルモンは小児にも成人にも共通して体の働きの維持に必要なホルモンですが、小児では文字通り成長にも必要なホルモンです。このホルモンの分泌が悪くなる成長ホルモン分泌不全症という病気があります。これによって背の伸びが悪くなった状態を成長ホルモン分泌不全性低身長と呼びます。成長ホルモンは治療用の注射薬が開発されています。成長ホルモン分泌不全性低身長(診断には注意が必要)のお子さんは成長ホルモン製剤を毎日家庭で自己注射することで背を伸ばすことが可能です。しかし、成長ホルモンが出ているお子さんに成長ホルモン製剤の治療を行った場合には背を伸ばす効果はありません。不思議に思われる方もいると思いますので、説明します。

 

 成長ホルモンは脳の下垂体という場所から分泌されるホルモンですが、その分泌量は人それぞれです。とても多く出る人、少ない人、人並みの人といろいろいます。個人差があるのは成長ホルモンの必要な量がそれぞれで異なるからであり、その人に最適な量が分泌されるようになっています。成長ホルモン分泌不全性低身長のお子さんは本来必要な量の成長ホルモンが出なくなった方です。だから病気なのですが、そのような病気の方に成長ホルモン製剤を打つと元々より体内の成長ホルモンの量が増えます。その結果、背が伸びるわけです。

 

 一方、病気でない方(成長ホルモン分泌能が保たれている方)に成長ホルモン製剤を打った場合では注射だけで必要な量を賄うことはできません。注射で体内に入る成長ホルモンの量は元々体内にある成長ホルモンの量よりも少ないためです。そこで体内の成長ホルモンが必要な量になるよう差額に当たる分を下垂体から自己分泌して調整します。結果として体内の成長ホルモンの量は注射をする前と比べても変わりません。つまり背の伸びには変化はありません。効果がないにも関わらず注射に関連したリスクのみが増える結果となります。

 

参照:小児内分泌学会の見解

 

 感の良い方はお気づきかもしれませんが、本来出ている成長ホルモンの量よりも多くの成長ホルモン製剤を打てば背を伸ばすことが期待できます。ブラックマーケットに走る方がいると困るのでここまで踏み込んで書いて良いのか迷いましたが、調べる方は自分で調べるでしょうし、そこで間違った認識をされても良くないのであえて書くこととしました。海外では特発性低身長として本来出ている成長ホルモンの量よりも多くの成長ホルモン製剤を打つというケースがあります。しかし、このようなケースでは本来必要とされる以上の量、つまり不自然な量の成長ホルモンを投与することになるので、通常の治療よりも副作用のリスクが高まります。

 

 日本ではもともと特発性低身長は病気ではないと考えられているため保険診療の適応にはなっていません。病気でない方の背を無理やり伸ばそうということになるため、保険医療ではなく美容整形と同じ自由診療というジャンルになります。自由診療として全額自費診療でやられる方もいるようなのですが、億万長者でしか治療できないような高額な医療費が必要となります。さらに自費診療の場合はちょっとした副作用であってもメーカーや国は保証しません。このような理由から保険診療を行う医療者としては自費診療であったとしてもお勧めできません。


次:検査を何度も繰り返して成長ホルモン分泌不全性低身長と診断されたのですが・・


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