咳・鼻水について

1:咳は止めなくていいのですか?

 咳はのどや気管支といった空気の通り道である気道の中の不要なものを取り除こうとする反応です。不要なものとは悪さをしている細菌やウイルスといった病原体、傷んでしまった気道の粘膜、誤って気道に入ってしまった異物などです。鼻水がのどに流れ込んできた場合にも咳がでます。また不要なものを出しやすくするために痰が出ます。ですから咳がでるからといって必要以上に止めてしまうとこれらの自浄作用が損なわれることになり、治るものも治らなかったりします。また喘息などでは痰が溜まってしまうと症状がより悪化し、重症の発作を起こすこともあり危険です。このため基本的には咳止めは不必要な薬です。では咳にはどのような薬が良いのでしょう。痰がひどいときや、痰の切れが悪くてひどく咳が出る場合には痰切りの薬で痰を出しやすくすると咳込む回数の減少と症状の緩和が期待できます。痰の切れが悪く何回も咳を繰り返していたのが、痰の切れが良くなり痰を出すための咳が少なくてすめばそれだけで楽になります。また鼻水が原因の場合であれば鼻水が溜まりにくくすることで咳症状の改善が期待できます。喘息が原因であれば喘息の薬で症状を緩和することができます。肺炎が原因なら肺炎の治療が重要です。このように咳の原因を改善する薬で治療を行うことが基本です。ですから通常の風邪の咳ですぐに薬が必要になることはまずありません。加えて普段よく使われる市販薬や外来で処方される咳止めは効果がないという報告ばかりで効果があるとする報告はありません(5参照)。効果のない薬は飲む意味がありませんし、もし効いても必要な咳が出せずに病態を悪化させてしまうわけですから、やはり咳止めは基本的には不要な薬であると言えます。

 お薬だけでなく水分をしっかりとることや空気の乾燥を避ける(乾燥していれば加湿をかける、寒い場合は加温も必要)ことも有効です。痰がのどに絡んでいるような時は水分を取ることで絡みが改善することもあります。

 

2:鼻水はどうですか? 

 咳のときと同じで鼻水も必要があるので出ています。鼻の中に入ってきた病原体や異物を洗い流し、取り除くという役割があります。花粉症などのアレルギーでも鼻水は出ますが、これはアレルギーの原因を取り除こうという反応です。アレルギーの場合は通常は大丈夫なものに対してアレルギー症状で鼻水が出ているため、治療により鼻水が止まることに問題はありません。しかしアレルギー以外が原因のときに鼻水の自浄作用を完全に押さえ込むことは望ましいことではありません。また、風邪のときに起こりやすい合併症として中耳炎や副鼻腔炎がありますが、このときに行われる治療は溜まった分泌物を排出することですから、鼻水止めを使うと分泌物の排出が遅れ、症状が長引く可能性が高まります。痰の切れも悪くなります。例えば赤ちゃんのRSウイルス感染による鼻水に対して鼻水止めを使うと鼻水や痰の排出が妨げられて呼吸困難の原因になることもあります。また、一部例外のお薬もありますが、 鼻水止めを内服すると眠気が起きやすくなります。個人差はあるものの小さな子ほど起こりやすい症状です。特に小さい子では必要以上に寝てしまい水分摂取が十分できなくなることがあります。これも良いことではありません。

 さらに一部の鼻水止めは熱性けいれんとの関連性が問題視されていますし、病原体を追い出すことも考え合わせると、発熱のとき鼻水止めは使用しない方が無難です。

 鼻水が多いと赤ちゃんでは哺乳がしにくくなり水分が十分取れなくなる危険性があります。1回量が減ってもその分こまめに飲めていて1日量としては大きく差がなければ問題はありません。しかし、鼻水が溜まっていて哺乳しにくそうにしている、寝るのも寝られない、そのようなときは市販の簡易鼻水吸い器でさっと取れる分だけでも取ってあげると楽になります。鼻水吸い器を使わなくても直接親御さんの口で吸ってあげるという究極の方法もありますが、吸ってあげた後のうがいは忘れずしてください。いずれにせよ溜まっている鼻水を全部とることはまず無理なのでがんばって取りすぎないようにしてください。鼻が傷んでしまって逆に症状を悪化させかねません。適度でお願いします。一度にがんばってとるよりもこまめに取ってあげる方が安全で効果的です。大きな子ならしっかり鼻をかませましょう。また咳のときと同じで空気の乾燥に気をつけ、水分もしっかりと取らせて下さい。

 

3:受診について

 以上のように風邪のときの咳や鼻水に対しては薬が必要となるケースはほとんどありませんが、不安があるときの受診自体まで不要というわけではありません。夜間安眠ができない、日常生活に支障がでるくらい症状が強い、1−2週間以上長引いているなどの場合は風邪以外の原因がないか、他に問題はないかなどの評価が必要となります。このような場合は「風邪なら薬はいらないけれど、他に問題がないか心配で」と言って受診されると不要な薬は処方されにくいと思います。

 

4: 子供の風邪薬を禁止する国

 海外では小児への風邪薬の処方を禁止しているところもあります。

 

 USA(米国)  2007年2歳未満禁止、20084歳未満自主規制

 カナダ2007年2歳未満禁止、2008年6歳未満禁止

 

 この他にもイギリスオーストラリア、ニュージーランドも6歳未満禁止しています。理由は効果がないこと、副作用の問題があることです。日本では量が少なく安全であるとして規制されていません。しかし、そもそも効かないものを使用することも問題ではないでしょうか?

 

5:咳止めの効果

 現在、市販薬や外来でよく出される鎮咳剤(いわゆる「咳止め」)は古い薬ばかりです。薬として認可された時には現在のような厳格な審査は受けていません。そこで2000年以降に現在の薬と同じようなやり方で有効性の調査がいくつも行われ、その結果が発表されていますが、一つも有効であるという報告はありません。次の図は2004年に米国小児科学会誌に発表されたものです(Paul IM et al. Pediatrics. 2004 Jul;114(1):e85-90)。

 

図:咳止めの効果比較

DPH: Diphenhydramine(ジフェニドラミン)

DM: Dextromethorphan(デキストロメソルファン)

PL: Placebo(プラセボ:偽薬)

<Paul IM et al. Pediatrics. 2004 Jul;114(1):e85-90>

 

 ジフェニドラミンとデキストロメソルファンという2種類の薬剤の効果が示されています。薄いグレーのバーが内服前、濃いグレーのバーが内服翌日です。6項目で比較されていますが、どの項目においても数値が高いほど症状が悪く、数値が小さいほど症状が軽くなっています。どの項目で見ても2種類の薬どちらとも内服前よりも内服後の方が数値が小さくなっており、症状が改善しているように見えます。これらの薬が認可された時はおそらくこれだけ見て、効いていそうだから薬として認可しようということになったものと思われます。

 しかしもう一つ、「プラセボ:偽薬」という項目があります。偽薬というのは薬の効果はないニセ薬という意味です。これを薬だと言って内服させた時にどうなるかということを見るのに用います。この偽薬でもすべての項目で他の2種類の薬と同等の変化があることがわかると思います。薬として効果はないものなのでこの変化は自然に起こっているものです。つまし時間がたって症状が軽くなったということを表します。風邪は自然と治るものですから、時間さえ経てば症状は軽くなるのです。私はこの結果を「これは薬は薬でも日にち薬という薬の効果です」と説明しています。お分かりですね。咳止めには効果がなく、内服して良くなったように見えたのは自然の経過を見ているだけだったのです。

 

 咳止めには効果があっても問題があることはで述べました。ここでは咳止めに効果がないことを述べました。それでも「気持ち薬」として欲しいという方もおられますが、私は処方していません。それは薬としての効果がなくても副作用の危険性は残っているからです。その危険性は少ないかもしれませんが、死亡するリスクもありえます(下の6参照)。

 

6:風邪薬の危険性

大衆薬の副作用、5年間で24人死亡 厚労省まとめ 

2012/8/29 20:38

風邪薬などの一般用医薬品の副作用の可能性がある死亡報告が、5年間で24人にあったということが厚生労働省から報告されました。主な副作用は皮膚障害や肝障害、間質性肺炎などです。

 

元の情報

医薬品・医療品機器等安全性情報 2012.08, No.293(一般用医薬品による重篤な副作用について)

 

 副作用報告は医薬品との因果関係が不明な場合もあるため、この報告の全てが薬の副作用というわけではないと思われますが、皮膚障害(薬疹)、肝障害、間質性肺炎という症状は薬の副作用としては代表的なものですから、やはりある程度の危険性があるものと考えて良いと思われます。もちろんこのようなことが起こるのは非常に稀なことです。そのため効果が期待できる薬剤であればデメリットよりもメリットが非常に大きくなるので使用が勧められますが、効果が少なくなるほど副作用の危険性を考えて使用するかどうかの判断が必要になります。市販薬にかぎらず、医療機関で処方される薬も同様です。副作用の危険性は市販薬よりも高いかもしれません(特に新薬)。で述べた咳止めのように効果がない薬の場合はどうでしょうか?・・・使用したくないという結果になりませんか? 私は自分にも、自分の子どもにもとても使う気になれません。

 

 風邪は自然と治るのが基本なので、その治療としての薬は必要最低限が推奨されます。


このサイトの他のページをご覧になるには

 → サイトマップ

 

アンケート

ご協力ください。


All for children...

すべては子どもたちのために

 

子供の病気のときは多かれ少なかれ心配なことが生じますが、このときの不要な心配がこのサイトを見ていただくことで減れば幸いに思います。

 

<サイトマップ>

 

当サイトのQRコード

現在の閲覧者数: