HANSというばかげた概念

日本線維筋痛症学会はHPVワクチン(いわゆる子宮頸癌ワクチン)の副反応の適正評価のためとして、「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(Human papillomavirus vaccination associated with neuropathic syndrome;HANS)」を提唱、診断予備基準案を発表しました。


診断予備基準案(2014)をみると

 

(I)子宮頸がんワクチンを接種(接種前は身体的・精神的な異常なし)

 

(II)以下の症状が複数ある

  1)身体の広範な痛み

  2)関節痛または関節炎

  3)激しい疲労が6週間以上続く

  4)心身・精神症状(記憶障害、突然の眠気、呼吸苦、脱力、環境過敏)がある

  5)脳画像の異常

 

(III)以下の症状を伴う場合がある

  1)月経異常、

  2)自律神経異常(めまい、頻脈、動悸、冷や汗など)、

  3)髄液異常

 

のうち、(I)+(II)3項目以上、(I)+(II)2項目+(III)1項目以上でHANSと診断となっています。

 

いずれにせよ(I)が必須です。これが非常にばかげています。

 

HPVワクチンを打ったこと、つまり(I)と(II)や(III)が関係していることは示されていません。それなのにこの診断基準は(I)を前提にしています。

 

(II)や(III)のような症状とHPVワクチンが関連しているのかどうかを調べようとすればHPVワクチンを打った人だけでなく、打っていない人でも(II)や(III)の発症率を調査して比較しなければなりません。

 

仮定の上でしか成り立たない診断基準なのです。

これは医学的にはまともではありません。

仮定でしか成り立たないので(I)の部分は何にでも置き換え可能です。

 

例えば「(I)中学校に入学(入学前は身体的・精神的な異常なし)」としても、それっぽい基準になるでしょう。


ちなみに先のHANSの基準は「若年性特発性関節炎や全身性エリテマトーデスなどの膠原病の診断が出来る場合は除外」となっているのですが、この学会の名前にもなっている線維筋痛症は除外リストに含まれていません。線維筋痛症の診断基準を満たす人がHPVワクチンを打っていれば自動的にHANSの診断になります。ばかげていますよね。

 

ちなみにHPVワクチンがらみで問題になった慢性疼痛はCRPS (Complex regional pain syndrome)と言って、

1:きっかけになる出来事(ケガ、ワクチン接種、採血、他)

2:元の痛みよりも、その後の痛みは異常に強く、長く続く。

3:手のむくみ、赤くなる、汗の異常などが見られる。

4:ほかの病気では、この病状を説明できない 。

というのが特徴です。

 

通常は受傷1か月以内に症状が出現するとされ、もともと思春期女子に好発することが知られています。ちょうどHPVワクチンの接種年齢です。いろいろな誘引で発症するとされていますが、HPVワクチンを打っていれば他の原因で起こっていたとしてもHANSと診断してあたかもHPVワクチンが原因であるということになります。

やっぱりおかしいですよね。

 

日本線維筋痛症学会って大丈夫?って心配します。

学会レベルでこんな状態なのは悲しいです。

 

ちなみに海外では国全体の医療情報を利用できる国もあり、HPVワクチンについても調査報告されていますが、これまでのところ特に何らかの疾患が増えているとの報告はありません。

 

例えば、デンマークとスウェーデンでの全国登録による調査では接種後2年のリスク期間と非接種期間の発症率の比較で、接種に関連する多発性硬化症またはその他の脱髄疾患のリスク増加はなかったと報告されています。

 

さらに、イギリスの報告ではHPVワクチン後のCRPS発生率は自然発生率を下回っていることも報告されています。

 

国としてのレベルの差にも悲しくなります。

コメント: 4 (ディスカッションは終了しました。)
  • #1

    加藤みゅう (水曜日, 08 4月 2015 00:44)

    研究している人達を批判するなら、現在、症状に苦しんでいる人達の原因は何か、症状を緩和する方法についてあなたのお考えがあるのか発表してください。
    国に対処を求めるべき問題で、線維筋痛症学会非難などは余計に患者を苦しめます。
    言うだけなら誰でもできます。
    では、あなたが納得できるよう動いてみてください。

  • #2

    katmat (金曜日, 10 4月 2015 00:39)

    加藤様
    誤解をされているように思います。
    「本当の敵は味方と思っている中にいる?」というタイトルで新規ブログ記事を記載いたしましたので一読いただければ幸いです。

  • #3

    こんこん (火曜日, 20 10月 2015 23:22)

    いくら研究してますといっても前提や方法が間違っていたら説得力がないのです。患者さんもあらぬ方向に誘導されます。この学会はあまりリサーチ力が高くないといつも感じます。

  • #4

    TDN (木曜日, 29 9月 2016 21:47)

    この線維筋痛症学会自体が非常に胡散臭いんですよねえ
    心因性疾患として認知されている各種症状を、無理やり器質的疾患として定義してるというか

    まぁ、裁判でHANSによる諸症状だと主張したみたいですし、エビデンス無し、と返されたらジエンドですね
    ASIAという概念も欧州でごくごく一部の医者により主張されていますが、あれも結局眉唾もののレベルを論文を読む限りは出ないですね
    もしもASIAが真実だとしたら、同じアジュバントを用いているB型肝炎ワクチンやDPTワクチンとかで被害者が多発してるはずなのですが…

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