コンビニ受診について考える

 「コンビニ受診」とはウィキペディア(2014年12月29日)では「一般的に外来診療をしていない休日や夜間の時間帯における、本来は救急外来を受診する緊急性のない軽症患者の行動のこと。」となっています。さらに「軽症患者が「平日は休めない」や「日中は用事がある」、「明日仕事があるから」等の個人的な理由で、本来重症者の受け入れを対象とするはずの救急外来を、夜間や休日に受診をする行為を示す。」と書いてあります。

 実際に医療現場でもそのように捉えられていることが多く、受診患者側の問題と認識されていることも多いように思われるのですが、実際にそうなのでしょうか?

 少なくとも小児医療においては誤解が大きいと思います。

 

 以下はこの件に関する私見となります。

 

 夜間休日に子どもを連れて受診される方で上記のコンビニ受診に該当する方は実際には少ないように個人的には思います。「先程から熱がでてきた」「先ほど吐いた」など症状が出てすぐに受診される方に関しては、すぐに受診をしたほうがいいと思われていることが多いように思うからです。これらの症状は医療者からすると明日まで待てるのにと思うような症状ですが、受診したほうが良いと思っていて受診してしまうのは仕方ないように思います。一番の問題はなぜすぐに受診したほうが良いと思ってしまうのかということでしょう。

 

 考えられる原因としては2つあります。ひとつはかかりつけ医に熱などの症状が出たら無条件ですぐ受診を勧めるような指導をされている可能性です。もう一つは誤った成功体験の可能性です。これに関しては初めての熱や風邪症状での受診を例にしたいと思います。このケースでは子どもにとって初めてなので不安はより強いものと思われます。症状が出てすぐ受診する方もいるでしょう。そのときに何らかの薬が処方され、その後すぐに症状がおさまったというような例が誤った成功体験となります。これについて補足します。

 

 ワクチンの種類が増え、衛生環境も良くなった現在、子どもの感染症の大半はウイルス性です。ですから何もしなくても自然と治ります。たまに5日以上長引くこともありますが、大半は数日でピークは過ぎます。1日や半日程度のこともあります。ウイルス感染によるこのような経過は薬を使っても早くなるわけではありません。でも症状が出て早期に受診し、なんらかの薬が出て、それを飲ませた後に症状がおさまったら・・早期受診早期治療で症状が軽く済んだと思ってしまう方が多いのではないでしょうか。実際にも大勢おられる印象があります。これは誤ってはいますが、一種の成功体験となるため、次も同じ状態になれば同じように行動(早期受診)になるのは当然の流れと言えるでしょう。誤った成功体験を作ってしまったのは医療者です。

 

 このように小児のコンビニ受診の最大の原因は医療者なのです。

 

 ではこの現状をどうすべきなのでしょうか。それは「不要な不安を持たなくても良いような状態」になることだと思います。患者さんが病院を受診する一番の目的はお薬ではなく、安心が欲しいからだと思います。風邪で受診して風邪薬をもらうのが安心だと思われている方にとっても本質はその先にある安心を求めています。

 でも風邪薬をもらうことによる安心は本質的なところでは無意味です。正しい知識をもっていれば不安にならず様子を見れたかもしれないのに間違った不要な不安のため受診するということにつながります。これは患者さんにも保護者にもいいことはありません。そうならないように医師にとっては受診時に患者さんにきちんと指導していくこと、患者さんにとっては受診時に医師になるべく具体的な指導を受けることが必要となります。

 それでも次に同じような状況で、やっぱり同じように不安になることもあるでしょう。その場合は受診して良いと思います。もちろん余裕があれば通常の外来を受診する方が望ましいです。このような受診を繰り返し、適切な説明・指導を受けているうちにだんだんと患者力・親力が育ち、受診すべきタイミングがわかってくるはずです。

 

 でもこれを行うには医療機関にとっては時間と手間がかかります。現在の保険制度の基では一銭の儲けにもなりません。一部その例外の制度もありますが、説明・指導にかける時間を考えるとやはり特別な儲けにはならないでしょう。風邪診療においては良心的な医療機関ほど儲からないようになっているのです。(これはこれで改善すべきと思いますが、医療行政の問題です。)

 

 それではどのような医療機関を受診すべきかでしょうか。患者力・親力を育ててくれるところをかかりつけにして下さい。一般的には症状のわりに投薬が多く、それに対して十分な説明のない医療機関は避けた方が良いでしょう。投薬が少なく、症状によって診療にメリハリがあり、説明がしっかりしている医療機関がお勧めです。もちろんいろいろな状況があるので普段は十分説明されていても、そのときに限って説明が不十分なこともあるかもしれません。ですから、疑問があれば気兼ねせず質問しましょう。良心的な先生ならきちんと答えてくれるはずです。

 

 なお受診の目安については、このサイトでも発熱について咳・鼻水について下痢について吐き気や嘔吐についてなどに記載させて頂いていますのでご参照ください。

 

追加:ゴールデンウィークや年末年始の医療体制について

 これも大きな問題です。ほとんどの医療機関が5連休、ひどいと9連休になるのです。休日診療所や救急外来は大混乱します。明日受診する医療機関があるとわかっていると待てる方であっても、明日も医療機関はあいていないと思うと不安がより強くなってしまいます。土日を比較すると土曜日の方が夜中の受診が多い傾向があるのですが、これは翌日も休みなので日曜日よりも不安になりやすいためだと思います。連休であればなおさらです。不安が不安に拍車をかけます。医療機関だけの問題ではないと思いますが、医療機関が一斉に休むというのは大きな問題だと思います。

 ちなみに病院だけでなく、特殊な検査は検査会社に頼む必要があるので病院だけが頑張っても解決する問題ではないところも問題です。


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